2012年10月21日日曜日

大国への道

 大国への道を歩む中国だが、欧米は中国を正しく捉えていないという、中国に詳しい経済学者 Martin Jacques の議論。

  A Point Of View: What kind of superpower could China be?


 中国は経済的には大国(人口を考えるとまだまだ先進国とは言えない)とはいえ、軍事力(装備の近代化)という点ではアメリカに大きく後れを取っている、というのは同意する。

 だが、中国が領土的野心に乏しい大国だという議論は、中国と領土(実質は領海ですが)問題を抱える日本や東南アジアの目ではいささか納得しかねる点もある。

 歴史を通じて現在の中国を描くのが正しいのか、という点は疑問なしとしない。
 
 以下、主要な論点をサマリーで紹介する。


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 歴史をひもとけば、武力で植民地を広げた欧州とは異なり、中国は朝貢関係で周辺国へ影響力を養った。
 しかも朝貢(中国の王に貢物をささげる)の代わりに中国の先進的な製品を持ち帰れたり、庇護を受けることができるなど、周辺国にとっても利益となるものだった。

China has never colonised any overseas territories. Overseas empires were a European speciality, with Japan getting in on the act for a short while too.

 China's relationship with them(*1) was based not on colonialism but what we now know as the tributary system. It neither ruled them nor occupied them. Rather, in return for access to the Chinese market and various forms of protection, the rulers of tribute states were required to give gifts - literally tribute - to the Emperor as a symbolic acknowledgement of China's superiority.

 欧米では征服者たちが英雄と称えられ、通りに名前が残され銅像が立てられているが、コロンブスより前にアフリカにまでいたる大航海を成し遂げた鄭和は、そういう扱いを受けていない。
The seven great voyages of Zheng He between 1405 and 1433 around the East and South China Seas and across the Indian Ocean as far as East Africa left no permanent mark - they were about demonstrating the glory of the Middle Kingdom rather than a desire to conquer. Those who left China to settle in South East Asia were seen as leaving civilisation and deserving of no support or protection by the Emperor.

Compare that with the way in which Britain and France celebrated the heroes of their colonial expansion. Our cities are littered with statues and street names in their memory.
国土が大きかったことから、他国を侵略する動機もわかず、中国は外部世界への関心が乏しい大国になった。
 (じゃぁ、チベットとかウィグルはと問いたいところだが、中国の領土的野心は大陸内に限定されたという議論で片付けられている)
Rather than look outwards, China's leaders look inwards. The exception was China's own continental land mass. Its expansion, rather than to the four corners of the world, was confined to its own continent.
※:朝貢貿易という国家間関係は欧米の感覚では理解が難しいと思うが、的確な説明をしていると思う。

*1:中国の周辺諸国(東アジア・東南アジア)

2012年10月15日月曜日

領土問題

 職場の食堂での昼食時のこと。
 いっしょに昼食を食べている同僚が、バナナケーキを持って来てくれた。その理由がなかなか秀逸で、かつこのブログの趣旨にもあっているので、紹介することにしよう。

 そもそも、バナナケーキは同僚のご母堂が作られたものだ。
 ご母堂は、ニュースか何かでフィリピン・中国間の外交関係が悪化しており、バナナが中国で売れなくなって、フィリピンの農家の人が困っている、ということを聞きつけたのだそうだ。
 貧しい国の人が困っているのはかわいそうだ、ということでバナナをたくさん買ってきて、その一部がバナナケーキになった。
 そのバナナケーキが、私の貧しい昼食を彩ったわけで、たいへんありがたい話といえましょう。 m(_ _)m

 ところで、中国・フィリピン間の外交問題というのは、南シナ海に浮かぶ南沙諸島の帰属をめぐる領土問題である。
 日中間の領土問題と同様、島自体は無人島なのだが、近海に石油の油脈があるとみられており、周辺諸国(フィリピン・ベトナム・中国・台湾)がそれぞれに権利を主張している。

 どこの国の主張が正しいのか、というのは判断しかねるが、見ていただきたいのはリンク先にのっている地図。

  Q&A: South China Sea dispute

 赤い点線は中国が主張する領海。南沙諸島以外にも中国が固有の領土と主張する島々があり、それらを前提に引いたのがこの線である。
 水色の点線は「海洋法に関する国連条約」による「200海里の排他的経済水域」で引いた線である。(領土問題の対象となっている島は、どこの国にも帰属しない前提で引いているのだと思います)

 ひとことで言うと、「中国さん、ちょっとずうずうしすぎない?」という地図である。
 たくさんバナナを買って、応援してあげたい気分にもなるというものだ。(あと、ベトナムコーヒーも個人的には好きなのだが、ただいま大量の紅茶の在庫と格闘中なので、手が出せません)

2012年10月13日土曜日

プライバシー

 たまたま読んだソースが英語だっただけ、というあまりこのブログ向けではないネタですが…。

 グーグルマップは、カーネルサンダースさんのプライバシーに考慮を払い(!)、顔にモザイクをかけている、という話。

   Google Maps shows its respect for Colonel Sanders’ privacy

    Face-Blurring Tech Goes Rogue: Google Maps Shows Its Respect For Colonel Sanders’ Privacy

 上の記事は Japan Today より。下の記事は Japan Today のネタ元である Rocket News24 より。


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2012/10/16
 誤記訂正:
    ×グーグルアース→○グーグルマップ